小説が本業


10年程筆を折るも2015年より執筆活動を再開。ギリシア神話をベースにした臆病死神と傲慢な夢魔が生に苦悩し己が役目に奮闘する「ランゲルハンス島奇譚」シリーズを始め、奇妙な短編がぞろぞろ載ってるよ(カクヨムに掲載)。

このページからでも読めますので宜しければご覧あれ光あれ(こっちの方が整理されているので分かり易いです)。

ランゲルハンス島奇譚シリーズ(長編)


ランゲルハンス島奇譚(1)

天使は瞳を閉じて

ある島に漂着した青年は記憶を失っていた。

クチバシ医者(ペスト医師)のマスクを被る青年は島の住民である半獣人のパーンに助けられ、そこが夢魔が治める島、ランゲルハンス島だと知らされる。青年はひょんな事から島主ランゲルハンスと知り合い、クチバシ医者と名付けられた。現世へ戻る方法は記憶を取り戻し、島主から逃れる事。クチバシ医者は生活の基盤を作る為、荒れ地で花屋を営みつつ記憶を取り戻そうとしていた。島の住人であるパーンや人魚、眼無しの女ニエ、魔女キルケーと関わりつつ、毎晩見る壮絶な夢を手掛かりに記憶を想い出す。そんな日々を過ごしていた。

しかし平穏な日々がある事件によって破られる。クチバシ医者は恩人であるパーンを救う為に旅に出る。

 

ランゲルハンス島奇譚(2)

シラノ・ド・ベルジュラックは眠らない(上)

死神タナトスの祖である父ローレンスが他界し、アメリアは正式に後を継ぐ。

無論、父の監視役である死神ヒュプノスのイポリトとの同居生活も引き続く。アメリアはイポリトの性の奔放さ、マナーの悪さに呆れ返っていた。

父の居ない生活に少しずつ慣れたある日、アメリアはイポリトと共に冥府の最高神ハデスに呼び出される。彼女は管轄区で連続殺人を犯す霊の回収を頼まれる。

 

ランゲルハンス島奇譚(3)

シラノ・ド・ベルジュラックは眠らない(下)

ヒュプノス二柱に殺され、ランゲルハンス島へとイポリトは旅立った。彼の恋人であるアメリアは悪魔ランゲルハンスの契約を破り、左腕を失った。一方ランゲルハンス島では、心臓にとどめていた土の精霊ヴルツェルの魂がランゲルハンスの体を乗っ取ろうとし、ランゲルハンスは床に臥せっていた。

ランゲルハンスは友である悪魔ライルとホムンクルスのディーにより手術を受け、ヴルツェルの魂を摘出、土人形におさめる。

しかしヴルツェルが脱走する。

ランゲルハンスの所属者であるシラノ(イポリト)は左腕の標本に乗り移ったアメリアの魂と共にヴルツェルの行方を追う。

 

ランゲルハンス島奇譚 外伝(1)

バンビとガラスの女神 ※R18

死神ヒュプノスのティコは全ての任を終え、死を迎えるのみだった。しかし『休暇を消化しなければ他の死神に示しがつかない』とホムンクルスのパンドラに極東の南端の島へ送られる。紺碧の海を渋々と眺めつつ過ごしているとペテン師マルチェロに出会う。

「俺のパートナーになってよ」

「犯罪の片棒を担げって? ごめんだ」

ティコは断るがマルチェロとの賭けに負け、彼に付き纏われる日々を送る事になる。マルチェロは後を追いかけ回しつつも紳士らしくエスコートをするがティコはそれが気に喰わない。彼女は『女性』として扱われるのを嫌がった。しかしある事件を境にティコはマルチェロに距離を許すようになる。隣を許し、心地良いと想う半面『私のマーク』に対して引け目を感じるティコ。それを薄々と感じ取るマルチェロ。死は二人を分かつのだろうか?

 

ランゲルハンス島奇譚 幕間(1)

天使と悪魔

ランゲルハンス島奇譚(1)「天使は瞳を閉じて」読後推奨。一作目の前夜譚。

ステュクスにてランゲルハンスとローレンスの会話。

(ローレンスよりもランゲルハンスにフォーカスを当ててます。一作目では書ききれなかった「もしローレンスが島に来るなら」の仮定話を寂しく紡ぐbar ステュクスでの一コマ。) 

 

 

 

 

ランゲルハンス島奇譚 外伝(2)

もう一人の天使

外伝シリーズ第二弾。

第一作「天使は瞳を閉じて」から十年後……。

ヴィヴィアンの魂を救う為、ハデスに課された十三の苦役をローレンスはこなしていた。

最後の苦役は「見習いの教育」。

母を苦役に取られ十年もの間、教育者不在の為に放置されたタナトス神アメリアの教育を最後の苦役として果たす事になる。

文化が遅れた田舎の島で、人の間でのんびりと育ったアメリアは何処かずれていた。彼女の突飛な行動に悩まされ笑わされ、ローレンスは最後の苦役を楽しみつつ務める。

しかし懐いているもののアメリアは何処かよそよそしく心の奥までは開かない。それもその筈、彼女はローレンスの実の娘であった。ハデスに「実の娘であるとローレンスに言ってはならない」と厳命された彼女は一年以内に父が自分を実子であると気付かなければ存在を滅される。「子供が居ない」と言いつつ、落ち込んだ時に優しく慰める父ローレンスにアメリアは複雑な感情を抱いていた。果たしてアメリアにはローレンスを「父さん」と心から呼べる日が来るのだろうか。

 

小娘と遣い魔 シリーズ

大男の魔術師に仕える遣い魔アルレッキーノは弟子の赤毛の小娘に毎度毎度手を焼かせられる。悪魔最下層の階級たる遣い魔にとっても他者の不幸は蜜の味。

しかしお調子者のアルレッキーノにとって小娘の泣き顔は後の不幸の暗示である。

今朝もさめざめ泣く小娘の寝小便の始末を主人たる大男に仰せつかった。遣い魔仲間から「小娘係」と揶揄われつつ小便臭いシーツを嫌々洗うアルレッキーノ。今日はどんな不幸が彼を待ち受けているのだろうか……?

※ニエの少女時代の日常。クチバシ医者が島に来るよりも大分以前の物語。

 

奇妙な短編 ぞろぞろ


金魚

女性が持つ無知性、歪んだ人格、独善性に男は閉口していた。

しかし人並みに性欲はある。女を抱きたい。

男は後腐れの無い「大人の遊び」を続けていた。

ある日変わった女に出会い、身も心も男は歪められる。

女の正体……いや歪んだ男の正体とは──?

 

 

 

 

 

 

夢魔

えー。莫迦は死ぬまで治らない、と言いやす。

いい年したこの莫迦、大男の夢魔に腹にのられてもなぁも気にしやせん。

それどころかぶぅすか寝直そうとしやがる。それもその筈、半年前に物盗りに入られた時もこの莫迦ぶぅすかぶぅすか寝腐った所為で命拾いした。その癖夢魔に起こされるとすわ起き上がって、ひぃと短い悲鳴を上げやがる。全く太ぇのか細けぇのか分かりやせん。ケチで助平で気が小さくてその癖プライドだけは一丁前。

そんなどうしょうもねぇ莫迦を甚く気に入った様子の夢魔の大男。

莫迦をどうやって可愛がってやりやしょう?

 

 

平成試供品浪漫譚

鄙びた温泉街に続く道路脇の馬鹿でかい駐車場を有した土産物屋。トイレ休憩に大型観光バスや家族連れの車が停まる。

ガチャガチャや観光会社の看板がずらりと並ぶタバコ臭く、昭和の終わりと平成の初めにタイムスリップさせる入り口を通り抜けると、老店主自慢の奇抜な電池玩具が出迎える。ラジカセ犬を偲ばす馬の玩具がひんひんぱからぱからと紐で繋がれたポールの周囲を駆け巡る。びかびかと光る蛍光グリーンの馬体から流れるは「ウィリアムテル序曲」。彼の道化じみた珍妙な様に訪れた客は噴き出したり、小馬鹿にしたり。ある日、店にやって来た美しい女の人形に馬は恋をした。しかしプライドの高い彼女にも蔑まれ、馬は落ち込みつつも密かに想う。果たして馬の想いは成就するのか?

 

メドゥーサ

蛇の髪を生やし、青銅の手を持ち、醜い姿を見た者を石に変える化け物メドゥーサはペルセウスによって殺された後、あの世でもこの世でもない島に逝く。

人を石に変えたくない彼女は人の立ち入らない森に居を構え、刺繍をしたり花を育てたり静かに暮らしていた。友人と呼べるのは眼が節穴の売れない物書きがたった一人きり。花の生育の他に刺繍が得意なメドゥーサは物書きに行商を頼み、刺繍の売り上げで細々と暮らしていた。

しかしある日、行商に出た物書きはメドゥーサに断りも無くBのガラスのぶどうと刺繍を交換してしまう。ガラスのぶどうの作家Bの作品は有名だった。自らの作品とは値段がかけ離れている。足りない金額を支払いにメドゥーサは森から一歩を踏み出す。